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みやげのみやげバナシ 《vol.1 岡山・広島編》

ESSAY

みやげのみやげバナシ 《vol.1 岡山・広島編》

Editer:dōzo編集部

旅行のたのしさのひとつ、お土産選び。

大好きな人のことを考えてキョロキョロ一所懸命さがすのも、「あ、これ、あの人にあげたら喜んでくれるかな~」ってふと思いついてニヤニヤしちゃうのも。
どちらもその旅ならでは、自分ならではの贈り物。

そんな"土産の話"を旅の思い出とともに綴っていくコラム連載「みやげのみやげバナシ」が始まります。
記念すべき第1回は、dōzoライター・PEさんによる、岡山・広島のみやげバナシ。では、どーぞ。

・・・・・・・

出張とはいえ、旅は旅だ。

ちゃんと巡ることのなかった、岡山と広島。
まさか、仕事で訪れる日が来るなんて。

住んでいる兵庫からは、すぐお隣りだが、“近くて遠い”とはよく言ったもんで、初めての旅の目的地。
もちろん、仕事で伺うのでいつものようなのんびり旅ではなく、小走りで観光をして、猛ダッシュでお土産を買う。忙しないが、そんな旅もたまにはいい。

仕事の予定は、倉敷で12時から。
張り切って朝早くに出たもんだから、倉敷に向かうには早すぎる。

よし。わたしには、寄りたい場所がある。

気になっていた岡山の老舗お菓子屋さんへ、うれしい寄り道


落合インターからすぐのところ、梅田屋羊羹店という老舗のお菓子屋さんへ。

到着してすぐ、あまりにも愛くるしい外観に"かわいい〜"と黄色い声が漏れた。

そして店内に入ってびっくり。羊羹はもちろん、クッキーやらマカロンなど、洋菓子と和菓子が一緒くたに並んでいる。
ショーケースにきっちり並ぶ宝石みたいなスイーツを指差しで選ぶのもいいけれど、子供のころ憧れたキラキラしたビーズのように、ひとつひとつ手に取りながらお菓子を選ぶのは、もっといい。

時々、商品が歯抜けになっているのが、ますます好奇心をくすぐるし、奥から顔を出したにこやかな店主のお兄さんが、あまりにも爽やかだ。

この不思議な空間が、わたしをヘンゼルだかグレーテルに、化させてしまったのだろうか。

その後、移動先でも、いや、帰宅してからも、ずうっとこの愛おしい"お菓子の家"のことを考えていた。

梅田屋羊羹店(岡山)のお土産


落合羊羹

一緒に住む、食い道楽の父と母へのお土産に。

よく見るつるんとした羊羹ではないというので、気になって購入。竹皮に包まれた、カチカチのようにみえる羊羹は、"外カリ、中トロ"の初食感。パッケージのかわいさは言うまでもないが、竹皮に包まれている姿も、いかにも硬そうな中身も、中がとろっと柔らかいギャップも、全部愛おしかった。

おかげで、食い道楽の二人も嬉しそうに、初めての"外カリ、中トロ"を堪能していた。

洋菓子各種

最近多忙からか、甘いものについつい手を伸ばしている自分用に購入。

口に入れたらすぐ、ホロっとほぐれるクッキーの幸福に勝るものなし。お気に入りは、塩気の効いたホロッホロの薄焼きガレット(写真左上)。
あっという間になくなった包装紙の抜け殻をみて、あまりの寂しさにしばらく呆然とした。ホロホロが恋しくって、どうしよう。

尾道の甘酸っぱさを持ち帰る


梅田屋羊羹店でお土産を買い、倉敷で仕事を済ませたあと、すぐに広島・尾道へ。

「尾道、好きです。なんかキュンってします。」
仕事で会った方がそう言ったもんだから、尾道への期待は最高だった。

尾道に着いたのは夕方で、ちょうど学生たちがちらほらと帰宅する頃。
セーラー服の真っ白なリボンをふわっとなびかせた女の子が、船乗り場で向かいの男の子に手を振る。

なんだよ、この青春は。
彼女たちは知る由もないが、羨ましくって、嫉妬するほどだ。

たった数百メートル先の島へ渡るのに、わざわざ船に乗り、わざわざ船乗り場でちょっと気になる同級生に手を振ったりする。その"わざわざ"が、やけにキュンとする。

これが、尾道か。と思った。

今にも雨が降りそうな天気で、夕日に照らされる尾道からの海は望めなかったが、訪れる者を虜にする尾道のキュンポイントは、十分に体感できた。

ふらふら歩いていると、目の前にレモンケーキの看板が。
思わず立ち止まり、これだ。と思った。
1個だけ買うつもりが、気がつくと5個入りの立派な箱を買っている。あんなにも眩しい青春を見せつけられたもんだから、わたしも甘酸っぱさが欲しかったのだろう。

こころなしか、尾道には甘酸っぱい土産が多い。
レモン生産量日本一なんだから、その理由は納得できるが、わたしにはこうとしか思えないのだ。
"きっと、誰もがこの街を訪れると、"甘酸っぱさ"を求めてしまう"
ほら、わたしもまんまとレモンケーキを、こんなにどっさり持ち帰っているし。

海の香りなんて鼻が慣れて気にしてもいない、セーラー服の彼女に、学ランで駆け抜ける彼の姿に、心がキュンとするのは、きっとわたしだけじゃない。

■ 尾道のお土産


松愛堂のレモンケーキ

尾道のときめきを持ち帰るため、自分用に購入。

レモンが入ったフワフワのスポンジにホワイトチョコレートがかかったやさしいケーキ。スポンジは自家製だというので、いたく感動した。ほんのり酸っぱく、ほんわか甘いケーキが、尾道でのひとコマを思い出させる。レモンの形が、とってもキュート。

尾道デニムプロジェクトのDENIM SOCKS

尾道に行きたがっているだろう、彼へのお土産に。

青色は尾道の海を、黄色は甘酸っぱい尾道の青春をイメージしたのだろうか。もはや、違っていてもいい。デニムを生産する際にでる残糸を使ったナイスなソックス。デニムと相性抜群だという。おいおい、デニム好きの彼にぴったりじゃないか。

・・・・・・・

今回は、出張だからと甘えて自分へのご褒美がやけに多い。
梅田屋羊羹店でもっとお土産を買うべきだったと後悔しているぐらいなので、ご褒美はあればあるほどいい。今度からも、惜しみなくどっさり持ち帰る。

岡山・広島が、“近くて遠い”だなんて、とんでもないことだった。
ここをよく知らなかった以前のわたしが憎い。こんなに魅力に溢れた二県を出張で巡るだなんて、時間が足りないにきまっている。

今度、尾道を訪れる時は、彼を連れて海風を浴びながらサイクリングなんて柄にもないことをして、彼らに負けない青春を堪能するのだ。
そうでもしないと、わたしの尾道の旅は完結しないんだから。

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